都市崩壊

 ゴォーゴォー、ドッドッ、一瞬、神戸に住んでいるボランティア達は顔を見合わせた。『これが地震の音や。』『そうや、そうや。』『こんな音がずっと揺れている間、しとったでェ。』それまで、はずんでいた話もとぎれてしまった。それは屋根から雪が落ちる音であった。年末、私たちは久しぶりに白馬八方で再会し、スキーを楽しんでいた。阪神大震災から一年近くたち、その記憶が薄らいでいく中で、この音は私たちにあの地震の事を再び思い起こさせてくれた。

 8月の現地調査の時、タクシーの運転手さんがこんな話をしてくれた。『横揺れを感じた人の家は残ったんや。死んだ人の家は最初の縦揺れでつぶれてしもた。』

今回の地震では死者5479名の88%が圧死(兵庫県警データ)とされている。報道では耳慣れない言葉もあった。朝日文庫刊の「都市崩壊の科学」を参考に紹介させて

いただく。

 

(1)クラッシュ症候群

 手足が長時間にわたって圧迫されると筋肉が壊死する。その壊死した筋肉からミオグロビンやカリウムといった化学物質が湊みだし、腎不全や心不全を引き起こす。

患部が堅く腫れ上がるだけなので、一見、重傷にみえないが、尿が茶色に変色し、量が減り、やがて意識が混濁し、手当てがおくれると死亡する。交通事故や労災事故で発生することもあるが、非常にまれで、治療法は壊死した筋肉を切除し、人工透析や薬物治療で化学物質を一刻も早くとり除くしかない。

 

2)トリアージ(負傷者選別)

 負傷者の容体をもとに治療の優先度を判定する作業のことをいう。

 @ 最優先治療 A 非緊急治療 B 保留・軽処置 C 不処置・待機

 に振り分ける。

 多量の出血や気道閉塞で救命できる人は@と判定し、真っ先に治療する。重傷者でも単純骨折など治療が遅れても死ぬ可能性のない人はAと判定し、後回しにする。

頭部損傷がひどく手がつけられない人や、すでに心臓がとまっている人は不処置のCとなる。災害医療と通常の救急医療とは違うという前提で、五感を総動員し集め

た情報を経験や本能に照らして瞬時に判断しなければならない。トリアージに

慣れている医者は多くはないだろう。

 

 

 

3)衝 撃 地 霊

 神戸海洋気象台で記録された地震波の速度波形は、縦揺れ、横揺れとも強いピークが揺れ始めにいきなり発生している。建物が何回か揺れてから壊れたのではなく、

最初の揺れでそのまま破壊されるという、逃げだす時間もない即時破壊であった。

鋼材はねばり強く、切れるまでかなり伸びるものだが、芦屋市の高層住宅では一辺40センチ、肉圧5センチの鋼材柱416本のうち、53本がナイフでスパッと切られたように破断した。破断部分にはまったく伸びなく、チョークが折れるような脆性破壊といわれている。ビルでは途中の階がつぶれる層崩壊が目立った。日本では耐震基準から起きないといわれていたが、8階建ての神戸市役所2号館は6階が完全につぶれ、

西市民病院では43人が閉じこめられ、1人が亡くなった。