この3月まで勤務していた学校は全日制、定時制、通信制がある単位制のいわゆるニュータイプの学校でした。単位制と言うのは授業が選択でき、生徒個人のニーズに合った学習が学年制よりしやすいことは確かですが、学習意欲がない生徒にとっては、卒業しにくいシステムなのです。神奈川県の公立高校入試には長期欠席申請という制度があります。長期欠席を理由に入試で不利にならないようにというのが建て前ですが、厳しい現実があることは変わりません。
定時制・単位制システムというのが、不登校であった生徒に適しているというのが、10年間の定時制高校勤務で得た実感です。勤務校では、長欠申請者で入学した生徒の72~3%が、元気に通学し、卒業していきました。特に中学校には通えなくても、市町村の支援教室に真面目に行っていた生徒はほとんどが卒業できました。ただし、長欠申請者の中で、怠学を理由として学校に行かなかった生徒にとって、単位制システムは厳しいものでした。
小学校、中学校で不登校を繰り返し、勤務校でほとんど休むことなく通学できた生徒に「どうして学校に通えるようになったのか。」と聞くと、「静かな学習環境と自分の気持ちが分かってくれる不登校経験者が居た。」という事をどの生徒も理由としてあげていました。定時制高校はいわゆる不良の集まりと言われた時期もありますが、教員の努力しだいで、静かな学習環境を守ることができます。そして、何よりも不登校だった自分の気持ちを理解してくれる同じ経験をした友との出会いが気持ちを前向きにしてくれるのです。